「寒っ…。」

 
 陸斗は一瞬身震いをすると、バイト先の新聞社へと急いで向った。
 

 思えば今まで陸斗の人生には良い事なんてなかった。母を早くに亡くし、父は失業。更には妹の入院。それについに耐えきれなくなった父は、2年前に自殺してしまった。だから凜夏の手術費は必然的に陸斗が払わなくてはいけなくなってしまった。
 それでもいい。凜夏を救いたい。それが心優しいこの少年の今の願いだった。

 
 新聞社へ着くと、中に入り今日配る分の新聞を荷台に積み、再び真っ暗な闇の中へと自転車をこぎだした。