Drawing~君と僕と~

「・・・つらいって気持ちはご両親には言ったの?」

僕は頷く。

「言ったけど、全然わかってもらえなかった。仕事で忙しいし、僕がわがまま言うことで迷惑するんだ。いつでも仕事のことを考えている人だからさ。
養ってもらってるんだし、文句は言えないよ」

「そう・・・」

「でも・・・」

僕はため息をつく

「それ以来、誰かと話すときに自分の事を話すと否定されそうで怖くなった。
それが怖くて今まで以上に、人とは話さないようにしてきた。何年も。今日、沖野さんと喋るまでは。」

「・・・何で、私に色々話してくれるの?」

「沖野さんはさっき、僕と沖野さんは似ているところがあるって言ってくれた。
嬉しかった。今までそんなこと言われた経験なかった。だから・・・」

僕はゆっくり深呼吸する

「だから、これからもここに来ていいかな」

沖野さんはしばらく黙って僕の顔を見て、ため息をつく。

「あの計画の話をしちゃった後だしね・・・あの話を誰にもしないって約束できるなら、ここに来てもいいわよ。」

「ありがとう、約束するよ」

沖野さんの顔を見て笑う。こうやって笑ったのも、久しぶりだ。

「・・・昔」

「昔?」

「誰かが言ってたわ。つらいときは空を見るといいって。」

「空を・・・」僕はつられるように窓から空を見あげる。西日が目に入って眩しい。

「空は広くて大きいから、見ていると自分のつらいことなんてちっぽけだって感じるんだって」

沖野さんは僕の方を振り返った。

「あなたは、つらいことがあった時、空を見てきた?」

思い出そうとしたけれど、思いだせなかった。