そして俺は鬼灯沙羅の両親と会うことになった。
『娘さんを僕の偽装婚約の相手として、迎えたいのですが』
そう言うと驚くほどあっさりした回答が返ってきた。
「はい!ぜひ!
よろこんで差し出します!」
な、なんつー親だよ、おい。
もうちょっと娘のこと心配してやれよ。
と、若干呆れながらも無駄な時間を割かずに済むというのはなんとも効率がいい。
『こんなことを言っては失礼かと思いますが、
我が遊馬電器は娘さんの半年間を…2億で買いたいと思います』
『2億で…買う?』
鬼灯沙羅の父親が目を見開いている。
『はい。
誠に勝手ながら調べさせていただきました。
それによりますと、借金が2億ほどあるそうで…』
「はい!はい、その通りです!
あなた、やったわよ!
これで借金地獄から解放されるんだわ!」
すげぇ…母親だな、おい。
娘がお金で買われる、っていうのにめっちゃ喜んでんじゃねーかよ。
『あの…では契約書にサイン、いただけますか?』
契約書を2人の前に出すと、
すぐにサインをもらえる。
おいおい、すんなり事が進み過ぎだぞ。
「あ、そうだ、晴弥さん」
『なんでしょうか?』
2人がうちを出るとき。
鬼灯沙羅の母親が振りかえり言った。
「偽装、なんて言わず
ホントに沙羅と結婚しても構わないですからね」
…ますます、すごい親だと思ったよ、俺は。


