洋介の弱点は『西野みゆ』だということは最初から分かっていた。

あんな反応を見る前から気づいていた。


でもできればこんな卑怯な手、使いたくなかったんだ。


だけど洋介はこの俺に土下座までさせやがった。

少しくらい、ビビらせといてもなんの問題もないだろ?



西野みゆの名前が出てきたときの洋介の反応は傑作だった。


『それだけはやめてくれ』

と、連呼をした。



『じゃあ、さっき俺が提示した条件をのむか?』


『あ、ああ。当たり前だ』


『じゃあ契約成立だ。

もし、今日のことを口外すれば…分かってるな?』


写真を洋介の前にチラつかせる。


『わ、分かってる。

だからお前…みゆにだけは手、出すなよ』


『…お前の態度次第だな』


俺はそう言い残して洋介の家をあとにしたのだった。



『瑞季』


『はい』


『分かってると思うがこのことは沙羅に言うなよ』


『承知しております』


『けどなあ、瑞季。

お前…最近、お喋りだぞ。』


『申し訳ありません。

ですが晴弥様の言葉数が少ないせいですよ』


…出た。

コイツは執事のくせにたまに俺を挑発するようなことを言ってくる。

しかも的確な言葉を使って。



『うるさい。

もう何も言うな』


『…かしこまりました』


余裕そうな笑みを浮かべている瑞季。

ちくしょう。

やっぱり俺はコイツにだけは敵わない。