瑞季のヤツ…


心の中で呟いてはあ、と溜め息をついた。

せっかく人がカッコつけようとしてんのに、本当のこと言いやがって。


回想から戻って来た俺は

手を顔で覆う。


あー…視線がいてぇ。

目の前の沙羅からの視線が目を閉じていてもヒシヒシと感じる。



『そこでお二人の関係は終わりました。

もちろん、今現在、晴弥様はあずさ様とお付き合いなど、しておりません。


沙羅様。

今、話したことは真実です。


ウソ偽りなど、一切、ございません。

これで…晴弥様を、もう1度信じることはできませんか?』


ホント、瑞季って勝手にペラペラと喋るよな。

ご主人様に忠実じゃない執事なんて珍しすぎるぞ。



「……分かった。

もう1度…信じようと思う」


沙羅が偉そうに答える。

何がもう1度、信じよう、だ。



『……なんだよ、沙羅。

その上から目線的な発言は。


それはお前の役目じゃなくて、俺の役目だろ?』


なんせ、お前は俺のペットなんだから。


「はぁ?!

ちょっと、晴弥!
勘違いしないでよ!

あんたを完全に許したワケじゃないの!

そうやってすぐまた調子に乗るな!!」


『お前が調子に乗るな』


「………晴弥ぁー!!」


良かった。

いつものように沙羅が言い返すようになって。


元気じゃない沙羅は

沙羅であって、沙羅じゃないからな。


沙羅。

もうお前に何も隠してないからさ。

だから、もう泣くなよ。


お前が泣いてる姿見ると、

なぜか心が痛いから。