スクールバックを机の上におろし、息を整える。

そしてこの興奮を少しでも鎮めるために取り敢えず、制服から部屋着に着替えることにした。

お気に入りの膝丈のワンピースに着替えてから、バックから携帯電話を取り出し、和希の番号をコールする。


「もしもし純花どうしたの?」

いつも用件はメールで済ます私からの電話に不審に思ったようだった。

「和希ちゃん、あのね。
 今日あの人に話しかけたの。」
「ええっ。」

和希にとってこの報告は予想外の何物でもなかった。

「純花が自分から話しかけたの?」
「・・うん。」

日頃から人見知りをする純花にしては思い切った行動である。


和希は純花が自分から行動して自分1人で新しい人間関係を築こうとしたことが、嬉しかった。

ずっと、和希の後ろをついて歩き、和希の紹介で友達をつくるというのが常だった。


要するに、純花はここまで行動してでも彼との関わりを築きたかったのである。


「で、何かその人に関することでわかったことはあった?」

言葉を交わしたのだから、少しくらいわかったことがあっただろうと和希は純花に尋ねた。

「えっと・・・、あっ、出張で中国に行ってたんだって。」

そう言って電話越しでもわかるほど自慢げに報告する純花。

「はぁ・・・。純花、違う。」
「違う?」

電話を片手に持ち、頭を抱えながら純花を諭す。

「違う。ああ、明日純花の家に行くから。そのとき、よーく話そう。」

電話を切った後、和希が深い溜息をついたことは言うまでもない。