「泣いてないです」
顔を見られないように、下を向いた。
そしたら私の顔に湊太くんの手が伸びてきて
顎をぐいっと持ち上げられた。
腕を掴まれ、顎を持ち上げられ、
目の前にちょっと睨んで私を見ている湊太くんの顔。
ドキドキした。
「泣いてんじゃん」
湊太くんの顔がどんどんぼやけて、
涙が頬をつたった。
「お似合いでした…彼女と……
幸せそうだなって思いました」
睨んでいた湊太くんの顔が、ちょっと優しくなった。
「だから?」
湊太くんは顎を持ち上げていた手の親指で、
涙を拭ってくれた。
「だから……
なぜだか自分でもよくわからないんだけど…」
「うん」
「二人を見ていたら、胸が苦しくなって…」
「うん」
「泣きたくなって……」
「うん」
「たぶん私…
男の子とあまり話しした事がなかったので、
なんか…私ひとりでドキドキしてしまって……
彼女がいる人にドキドキするなんて…
私………」
ぎゅっと湊太くんに抱きしめられた。
「俺だって
ドキドキしてんだけど」



