【完】UNBALANCE/チャラ男とお嬢







アップライトタイプのピアノ





一見黒に見えるけど、





光に当たると、赤茶色に輝く。








私はこのピアノが大好きだった。



このメーカーのピアノ、買った当時、かなり高かったと思う。







「昨日湊太くんから電話があって、



湊太くんはピアノを買おうとしていた。




自分と重なって見えたよ、湊太くんが。




でもきっと弾きなれたこのピアノの方がいいだろう。




持っていきなさい」






確かに弾きなれたピアノの方がいい。でも……






「これはお父さんがお母さんにプレゼントしたピアノでしょ?




私が持っていくわけにはいかないから…




1年間でお金貯まったし、



自分でピアノ買うよ」







お父さんは首を振った。



「ピアノは高い。香澄が1年間で稼いだお金は、


これからの生活費にとっておきなさい。





弾いてもらえないピアノなんて悲しいじゃないか。




ここにあってもしかたない。



島で弾いてあげてくれ。



お母さんもそうしてほしいと思っているさ」






それから、お父さんは


ひとつひとつの傷をわけを話してくれた。



初めて知った傷のわけ




1番目立つ傷は、私がお腹にいる時、お母さんが掃除機をかけていて、




お父さんが代わろうと掃除機の取り合いになり



掃除機がピアノにぶつかってできた傷だった。




傷がたくさんついた、思い出いっぱいの


赤茶色に輝くこのピアノ



お母さんと奏でた、ひとつひとつの鍵盤



ピアノに込めたお母さんへのお父さんの想い





大切にするよ…私の嫁入り道具