次々に料理が運ばれ、
すごくおいしそうなんだけど、
お皿にちょびっとしかのっていない料理を
残念に思った。
でも食べてみたらすごくおいしくて…
少しの間、変な視線を忘れていた。
食べ終わって、しばらくしたら、
お店の人がグランドピアノの蓋を開けた。
「弾いてよ」
湊太くんは本当にうれしそうだった。
「緊張…するな……」
私は1度フキンで手の汗を拭いてから、
ピアノの椅子に座った。
何……弾こうかな…
湊太くんだけじゃないし
お客さんたちもお店の人もいるし
間違えても恥ずかしいし…
得意な曲………
しばらく考えた。
そうだ……お母さんが好きだった、
あの曲にしよう
ちらっと湊太くんを見たら、
ニコッと笑って頷いてくれた。
私も頷いて、
ゆっくりと
ゆっくりと
静かに
弾き始めた
リスト作曲
【愛の夢 第3番】を



