その日の月は、特別に綺麗だった
ほぼまん丸に近くて、それに今まで見たことがない程に、輝いていた
「…きれいだな」
「…うん」
彼女に会いたい
その気持ちが強くて、僕はとにかく彼女に会うことに決めた
僕達は屋上の手すりにもたれ掛かり、二人で空を見上げていた
「……あのさ」「……淳くんは」
僕は今の正直な気持ちと、今まで知らなかった全ての事を彼女に言いたいと思った
しかし、それに重なるように彼女が話を始めた為にお互いに一旦話すのが止まった
「…えっと…どうぞ」
僕が先に話せば彼女の話が聴けないような気がしたので、順番を譲った
彼女は軽く頷くと続けた
「…淳くんも、優子さんと同じ。うさぎの耳を持ってるんだね?」
彼女の指は、夜空に見える月。そのうさぎに見える所を指しているようだった
「え?」
「うさぎの耳は、とても良いんだよ?いろんな音を聴ける…淳くんも同じ…他の人は聴いてくれないのに、淳くんは私の話を聴いてくれる」
その時、僕の胸がキュッと締め付けられる気がした
「……優子さんにね…淳くんは、今日は会えないって言われたんだけれど…でも、会える気がしたから…」
「うん…」
彼女に話したい事はたくさんあるはずなのに、胸が苦しくて何も言えなくなっていた