優子さんは、僕の車椅子を押してエレベーターに乗ると一階のボタンを押した
エレベーターはゆっくりと一階へ降りていった
その間、僕も優子さんも一言も話さなかった
その時間が僕には、凄く長く感じた
一階へ着いてエレベーターを降りると、受付ホールの端の方で車椅子を止めた
そこで、やっと優子さんが口を開いた
「淳くん、今エレベーターに何人居たか覚えてる?」
優子さんは、真面目な顔をしてどうして、そんな質問をされたのか分からなかったがとりあえず答えた
「え?…僕達以外に、2~3人くらい…」
優子さんは、うつむいて首を振った
「……私達以外には、誰も乗っていなかった…」
優子さんの言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になりなんだか急に身体中が寒くなった
「え?」
「…分からなかったんだよね?はっきり見えすぎていたんだね…霊の姿…だから気付かなかった…」
「……」
僕にはなんとなくこの後、優子さんが何を話すかが分かった
優子さんの話したい事は分かったが、それを受け入れたくなかった
「いや…気付きたくなかったのかもね…どうして、こんな話をしてるか…もう分かるよね?」
「…彼女が……ゆいちゃんが…だから?」
優子さんはゆっくり頷いた
「まあ、それだけじゃなくて…淳くんの為なんだけどね…」
「……」
「部屋、戻ろうか?…あと、今晩はゆいちゃんに会わない方が良いよ…私から理由つけて断っておくから…」
僕が無言で頷くと、優子さんはさっきと同じ道を病室へ向かって、僕が乗った車椅子を押し始めた