世間がクリスマスモードの中だった
僕は高校へ登校する途中で原付バイクで転倒し右足を骨折した為、病院に入院をしていた

ある夜、眠れずに病院の中を車椅子でうろうろしていた
「あー。つまらない」
いつの間にか、一階の受付ホールまで来ていた
受付ホールは昼間とは違い薄暗くガランとしている
とりあえず僕はホールの真ん中に来てみるも、五分もしないうちに寒くなってきた為に戻ろうかと思い始めた時だった
「また、こんな時間にうろうろして…ダメでしょう?」
聞き覚えのある声が背後からした
僕の担当の看護師、優子さんの声だ
「ごめんなさい」
そう言って振り向いてみたが、そこに優子さんはいなかった
「あれ?」

ホールの端にある、自動販売機の前に二人の人影が見えた
自分は優子さんに見つからないよう、二人がはっきり見える所までゆっくりと近づいてみた
「ごめんなさい…優子さん」
「謝られても困るんだけれど…ゆいちゃん、つまらないのは分かるけれど…」
優子さんと、話しているのは女の子だった
どうやら『ゆい』という名前らしい
見た感じだと、自分と年は大して変わらないくらいだ
自動販売機の灯りに照らされてる彼女の後ろ姿に、僕の胸がドキッとした
「…じゃあ、ゆいちゃん。おやすみ」
「…はい。優子さん、おやすみなさい」
話しは終わった様子で、彼女は病棟の方へ歩いていった

「彼女って、僕と同い年くらいじゃないですか?」