ナース服から普段着に着替えると、ちかはいつもの道をトボトボと家路に着いた。
夜勤明けの疲れた身体に遅い朝の光は容赦がない…

ちかは歩きながら先輩ナース杉山との会話を思い返していた。

「じゃ、家族は全くいないんですか?」

「そうみたいよ。元々栄養失調と脱水症状で部屋で倒れていたのをマンションの管理人が見つけて救急車を呼んだみたい」

「そんな…」

「結局色々な連絡先を探したみたいだけど…カナダに結婚している妹さんがいて…彼女が色々手配はしたみたいよ」



マンションのエレベーターに乗り行き先ボタンを押しながら

「先生…一体…」

ちかはそう呟いた…


部屋に入るとちかはキッチンのテーブルに鞄と部屋のキーを投げ出すと、崩れる様にソファーに身体を預けた

(センセ……)

ちかは頭がボーっとしていた、神谷の事ばかりが目の前に浮かんでくる。
ふとちかは腰を上げるとクローゼットを開けて何にかを探し始めた
そしてしばらくするとアルバムを一冊持ってきて、再びソファーに腰を落とした。

ちかは膝の上に置いたアルバムを開こうとして一瞬指を止めた…

少し目を閉じ、ゆっくり厚い表紙をめくった。


中表紙に

『准とちかの想い出』

とキラキラにデコレーションした文字で書いてある。
ちかは少し胸が暖かく痛くなるのを感じた。
その文字のページをめくると、アルバムにちりばめてあるたくさんの思い出の瞬間が胸を突き刺した。
笑っている神谷
はしゃいでいる声の聞こえそうなちか

寄り添っている二人…

アルバムには写真に交じって何枚かのプリクラも貼ってある。ちかはそれを見ながら、プリクラを撮るのが恥ずかしいとゆう神谷を無理矢理引っ張って行って撮った事を思い出した。

ちかは少し微笑んでいた。