神様の暇潰し? 〜 The love story of mask human 〜



 じいさんはしばらく若者の行動や言動について文句を言っていた。
 最初は警察に電話しようかとか、幽霊じゃないかとか考えていた俺も、いつしかじいさんの饒舌(じょうぜつ)ぶりに、完全に拍子抜けしてしまって唖然としていた。


 ある程度若者への文句を言い終わったじいさんは、コホンと咳払いを1つすると、唖然としている俺に向き直って真剣な眼差しを作った。
 だいたい八十代くらいであろうじいさん。しかしそこらにいるヨボヨボなじいさんとは違い、瞳には凛とした生気が宿っている。




「さて、本題に入ろうかのう」



「はぁ……」



 『本題』とはいったい何を示すのだろうか、疑問は深まる。突然俺の部屋に現れたじいさんは、真剣な眼差しを崩さず、さっき若者について文句を言っていた口調と同じくらい軽い口調で俺に言い放った。




「ワシは神界から来たゼウスという者じゃ。いわゆる神様じゃよ。君で暇潰しさせてもらいたい。答えは聞いとらん」



「はい?」



 脳内の理解が追い付かない。だがゼウスと名乗ったじいさんは、俺が戸惑っているのをしり目に話を止めようとはしなかった。




「君は『浄化戦』という戦いに自分の主と共に参加し、敵を倒して宝石を6つ集めるのじゃ。今から説明することをよく覚えておくのじゃぞ、少年よ」



「ま、待ってください、意味がわかりませんよ。そ、それに、自分を神だなんて、病院にい………」

「【黙れ、動くな】」



「っ!? 〜〜……!!」


 俺がやっとの思いで発したこの言葉も、ゼウスは聞き耳を持とうとはしていない。それどころか、ゼウスが言葉を発した瞬間に口が強制的に止まり、身体全体が金縛りにあったように動かなくなった。
 身体を動かすことも、言葉を発することが出来なくなってしまった俺は、ゼウスに対して今までに感じたことのない圧倒的な恐怖を感じていた。