しばらくベッドで横になって睡魔に身を委ねていると、カバンの中で携帯のバイブレーションが鳴った。
どうやら電話ではなくメールのようだ。とはいえ俺のところにくるメールといえば、メールアドレスを教えている幼なじみ2人のうちのどちらかしかありえない。
「はぁ……よいしょ」
重い腕を動かし、放り捨ててそのままにしていたカバンを開けて中を探る。教科書などを学校に置きっぱなしにしている俺のカバンは空っぽに近いため、携帯はすぐに見つかった。
「あぁ…陽奈か……」
折り畳み式の携帯を開いて受信したメールを開くと、受信メールのFrom欄には『中村陽奈』の文字。陽奈からのメールは大体毎日くるため、特に珍しくもない。
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From|中村陽奈
件名|ノートどう?
今日貸した数学のノートのことなんだけど、役に立ちましたか??
役に立ってくれてたら嬉しいです(*^^*)
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どうやら貸してくれた数学のノートのことようだ。顔文字なんかも使われていて、いかにも女の子っぽい感じの柔らかいメールである。
まだノートを見てはいないが、とりあえずいつも通り普通に返信する。
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To|中村陽奈
件名|Re:ノートどう?
まあ、いいんじゃないか。
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送信。一見、一行の短い文のように見えるが、これでも結構長いほうだ。俺の返信はもっと短調に『うん』とか『へぇ』とかの方が大多数なのだ。
返信は1分も経たずに返ってきた。また寝る体勢に入ってしまっていた俺は、睡魔と戦いながら携帯の画面を見る。
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From|中村陽奈
件名|Re:Re:ノートどう?
えっへん!O(≧▽≦)O
頑張って音勇にも分かりやすいように書いてるからね!
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陽奈のメールは、普段の性格と変わらないといつも思う。言い方や調子などが知っている陽奈そのものだから、メールでも気が許せるのかもしれない。

