「それで、私は最初に何をすればいいのかな?」
「最初は俺と契約を行うんだ。それが終われば正式に陽奈が俺の主になる」
「じゃあその、契約ってやつやらなきゃ! どうすればいいの?」
俺はさっき陽奈が操られていた時に手から落としたロザリオを見つけると、くわえて陽奈の元にに差し出した。
「このネックレスをどうすればいいの?」
陽奈はロザリオを俺から取るとまたじっくりと眺める。
やはり、さっきの契約をしてしまいそうになった時の記憶はないらしい。
「たぶん、そのままロザリオを見続ければ良いと思う……」
「これロザリオっていうんだね〜」
俺に言われた通りロザリオを見続ける陽奈。しかしさっきのようなことは起こらない。風も光も起こる気配はなかった。
「あれ……何も起こらないな……おかしいな」
「猫さん。何だか私、わかる気がするよ」
そう言うと陽奈は、ロザリオを胸に抱いた。その光景は、正にさっき陽奈が操られていた時と同じだ。
「我、浄化戦へ参加する者なり。臆することなく勇ましく闘い、全力を尽くすと、この身に誓う……」
契約文を唱え始めると、陽奈の周りに光と風が集まり始める。
知らないはずなのに陽奈はさっきと同じ言葉を紡ぎ始めた。さっきのように何かに言わされている感じではなく、自らの意思を頼りに言っている感じだった。
「浄化戦の規約に則り、我、契約を行う。我こそは主、名を中村陽奈。共に歩みし従者の名を黒瞬(コクシュン)と命名」
「良いぞ、その調子だ陽奈!」
光と風が部屋中を包む。本やぬいぐるみが部屋をぐるぐると飛び回っている。下手したら本なんかが当たってしまいそうだ。

