「本当に、いいのか……?」
俺は陽奈に問う。陽奈は俺を放すと、優しい笑顔を浮かべて答えた。
「うん、本当だよ」
「凄く危険な目にあうかもしれないんだぞ。本当にそれでもいいのか……?」
内心、『やっぱりやめた』と言ってくれたらどれ程気が楽になるだろう。そう言ってくれれば俺は一生を猫として過ごすつもりなのだ。もちろん後悔は無い。
「私、どんなに危険なことに出会っても猫さんのために頑張るよ? 約束!」
答えはわかっていた。陽奈は本当に優しい。素性の知れない俺のために危険に飛び込むと言ってくれているのだ。そんな言葉に無性に胸が熱くなった。
「わかった……陽奈を主と認める。宜しく、陽奈」
「うん! よろしく、猫さん!!」
陽奈は満面の笑みを浮かべてもう一度俺を抱きしめた。今度はさっきよりも何十倍も強い力で抱きしめられたため、声が出せない。
――く、苦し……死ぬ……っ。
「あ、ごめんなさい……つい嬉しくて……えへへ」
俺の心の声を悟ってか、陽奈は俺をすぐに放した。その後、照れ笑いをして俺を撫でた。
「はぁはぁ……死ぬかと思ったわっ!」
「うぅ〜……ごめんってば〜……」
「本当に大丈夫かな……」
一瞬、この先が少しだけ心配になってしまった。

