仕方がない、認めよう。それしか今の陽奈を満足させることは出来ない。
「ね〜こさん!」
答えを急かすように俺を呼ぶ陽奈。対する俺は一度ため息をついてから続けた。
「わかったよ……認める。そう、話せるんだ、俺」
「やっぱり!!」
陽奈の顔が一気に輝く。それはもう、星なんかが出てくるんじゃ無いかと思うほどの輝き方だ。
「凄い凄い! 話せる猫さんなんだ!!」
「ま、まぁ……」
「なんでなんで!? なんで話せるの?」
神様に人間から猫に変えられました、なんて言える訳ない。そもそも、俺が人間だとバレたら本物の猫になってしまうのだ。
「色々事情があってな……」
「何だか猫さん困ってるみたい……私で良ければ相談にのるよ?」
簡単に相談出来れば苦労はしない。浄化戦のことを陽奈に相談すれば、必ず俺のために主になってくれるだろう。そういう優しいヤツなのだ。
だが、浄化戦がどんなものかわからない以上、幼なじみである陽奈を危険な目にあわせる訳にはいかないのだ。
「助けてくれてありがとう。だけど俺はそろそろいかないといけないんだ。すまない」
「え……猫さん行っちゃうの……? どこに? お外、たくさん雨降ってるよ?」
明らかに陽奈の声のトーンが下がった。さっき陽奈はずっと猫を飼いたかったと言っていた。それだけ寂しいのだろう。
「どこにって……決まってる訳じゃないけど……ここには居れないんだ」
主の傍こそ、俺の行くべき場所なのだろう。だとするならここは俺がいるべき場所じゃない。

