陽奈の部屋は白を基調とした十畳くらいの綺麗な部屋だ。ドアから入ると正面に大きな窓がある。元々フローリングだった床にはカーペットが敷かれ、ベッドのヘッドボードの上には黒い猫のぬいぐるみが数体置かれていた。ベッドの横に置いてある勉強机の上は、女の子らしくちゃんと整頓されている。
「ずぶ濡れの猫さんはどこから来たの? 野良猫さんなのかな〜?」
優しい陽奈の声が部屋に響く。まず陽奈はストーブのスイッチを入れて部屋を暖め始めた。その後直ぐにカーペットの上に座り、俺をタオルで丁寧に拭いてくれた。
さて、どうしたものか。陽奈がゼウスが導いてくれた主なのだろうか。それとも違うのだろうか。それはわからないが、俺自身は陽奈をこんな変なことに巻き込むのに反対だ。
「あれ、何だろうこれ……首輪、じゃないよね?」
俺の首にかかっているロザリオを見つけた陽奈は、それをゆっくりと俺から取った。
「綺麗なネックレスだね〜。猫さんのなの?」
――おいおい……かけるなよ……
陽奈は物珍しそうにロザリオを眺めていたが、しばらくしてロザリオを俺の首に戻した。
「猫さんのネックレス、綺麗だね!
あ、ちょっとまってて、ホットミルクと何か食べ物探してくるから!」
陽奈はそう言うと自分の部屋から足早に出ていってしまった。

