窓を開けようとしたが、ご丁寧なことに鍵までかけてあったため断念。結果、自室に入れなかった俺はトボトボと寮の正面玄関前まで歩いてきた。
相変わらず冷たい雨は降り続いている。体全体が濡れてるせいで更に雨は冷たく、気温は寒く感じた。
――少し……ここで寝よう……なんか凄い眠い……
俺は死ぬのだろうか。一日歩き回ったせいで空腹は絶頂だし、疲労もたまっている。こんなとき寝てはいけないといわれるものだが、もう、いいだろう。
俺は主を探せなかった。見付けることが出来なかったのだ。このまま一生を終えるのも、俺は悪くないと思ってしまった。何故なら、俺がこんなに町を歩き回って何かを探すなんて初めての事だったから。
――ゼウス、お前の暇潰しに付き合えそうにない……
そう心の中で謝罪した俺はゆっくりと地面に丸くなった。何故かその時、寒いという感覚はなかった。ただただ眠かったのだ。
――お休み。
目を閉じる。目の前を闇が包み全ての感覚が消え去ろうとした。
「猫さ……?」
誰かの声が聞こえる。かろうじて聞き取れるその声は女の子の声だろうか。
「だい……ね…さん!」
俺を暖かい人肌が包み込む。そして俺を抱き上げる感覚があった。
――人肌ってこんなにも暖かいもんなのか……
薄れゆく意識の中でそんなことを考えていた。
次の瞬間、俺は意識を失った。

