取り敢えず俺は立ち上がって、近寄ってくるギャル女から逃げた。いくら外見は猫でも中身は人間。触られるのは嬉しくないし、ましてや相手はギャル女。何をされるかわかったものではない。
「逃げた。可愛くないし〜」
「だから止めとけって言ったろ。ほらさっさとゲーセン行こうぜ」
「しょーがないっか。バイバイ猫ちゃん、気を付けてね」
ギャル女はそんな優しい言葉を残してチャラ男の元へと戻っていった。見た目はただのギャルだが、優しい心はある子のようだ。
「いくぞ」
「バイバ〜イ」
緑地公園を出るときに笑顔で手を振るギャル女に、俺は少し尻尾を振って返答した。さっきは逃げたが、少しくらいなら触らせるのも良かったかもしれないと少し後悔してしまった。
「猫って、色々大変なんだな……」
普段野良猫なんて見向きもしない俺だが、この機会に少しかまってやろうと改心した。もしかしたら、野良猫だと思っていても実は中身は人間だったりするのかも知れない。
――さて、また主さんを探しますかね。
俺は緑地公園を出て商店街を一周回ったが、結局収穫はなかった。ましてや商店街を回っている最中に、いよいよ雨が降り始めたのだ。その雨は中々強く、降り始めてからほんの十数分で水溜まりがそこら中に出来てしまうほどだった。
――寒いな……クソ……やっぱり厄日だ。
季節は十二月。冬の寒さと雨の冷たさが二つ一緒に襲ってくる。普段は暖かい毛も、今はただの邪魔でしかない。

