ゼウスは笑みを絶やさずに話ている。笑っているゼウスは普通に見たら優しげなじいさんに他ならないが、やっていることは悪魔顔負けだ。だからその優しげな笑みも不適な笑みに感じられるのだろう。
「君たちのようなワシに選ばれ、動物に変化している人間は50人いる。彼らには12時間の『浄化時間』が与えられ、その時間帯は動物から人間に戻れるのじゃよ、良かったのう。ワシが決めた君が人間に戻れる時間は、午前6時から午後6時までの12時間じゃ。学生は学業を大切にせねばいかんからな。学校へ行ける時間帯は人間に戻してやろう、フォッフォッフォ」
果たしてこれは情けか、『浄化戦』とやらのルールか、ゼウスの気まぐれかは定かではないが、12時間でも元の人間に戻れるというのは嬉しい限りだ。ずっと猫の状態にならないとわかっただけでも気持ちが少し楽になった。
「さて、ワシからの説明は以上な訳じゃが、君から1つだけ質問を受け付けよう。よく考えて1つだけ質問しなさい。必ずや答えよう」
たった1つのみ許された質問。色々ありすぎて爆発しそうな思考回路を振り絞って考えを張り巡らす。
そして1つの質問を思い付いたのだ。
「俺は6個宝石を集めたらちゃんとした人間に戻れるけど……主には何か利益はあるのか?」
「よい所に気が付いたのう少年よ。いや、猫よ」
ゼウスはコホンと咳払いすると人差し指を天に向けて話を続ける。
「『浄化戦』を制し、見事6つ宝石を集めた主は、1つだけ願いを叶えることが出来るのじゃ。ワシからのプレゼントじゃよ」
「すごい……」
片や無理矢理動物にされ、それを浄化する。片や自分の願いを1つ叶える。この不公平感が堪らなくやる気を萎えさせる。

