尻尾を振りながら、猫は嶌子の足元に座っている。



「恭也、ふざけてんの?」



ふざけているわけではないことは、心の底で分かっていた。



認めたくない。



認めたくない!



恭也であってほしい。



せっかく、せっかく想いが通じたのに。



せっかく、恭也の気持ちも聞けたのに。



「お願い、神様…。」



胸が締め付けられるように痛い。



ただ、なぜか涙は出なかった。



だって、昨日あんなに幸せな時間を過ごせたから。



最後の最後に、恭也はあたしに会いにきてくれて、欲しい言葉をくれて、あたしの初恋を綺麗に完結させてくれた。



「恭也…。」



手を差し伸べれば、猫はやってくる。



ただ、ナカミは恭也じゃない。



「バイバイ、恭也。」



バイバイ、あたしの初恋。



バイバイ、あたしの想い人。



バイバイあたしの…









Fin.