「聞こえて当然。
だって俺がしゃべったもん。」



再び、嶌子は身体を固くした。



首が動かず、視線だけ下げる。



こっちを見上げているソラと目が合った。



ブルーの瞳に、嶌子の影が映っている。



「状況理解したか?」



信じられないものを見た。



ソラの口が



動いた。



悲鳴は出なかった。



ただ、心臓が爆発的に鼓動する。



灰色のしなやかな猫は、するりと膝から降り、嶌子の正面に立った。



「よぉ。」



今度は悲鳴が出た。



ソラ、いや、何かが顔を背ける。



「うるさいな、近所で騒ぎになったらどうすんだよ。」



どうするってアナタ…。



今、今、今、何が起こって…。



「あのな、落ち着いて聞け。」



それでも動転して後退る嶌子に、とうとう何かは怒って噛み付いた。



「い、ええっ!?」



容赦なく、噛んだ。