ある晩、嶌子はここに越してきた時に友人からもらった愛猫のソラと一緒にテレビを見ていた。



特に、代わり映えのしないバラエティー番組。



膝に乗ったソラも、おとなしく画面に見入っている。



「ソラ、あの芸人、面白くない?」



いつものように、嶌子がソラに話し掛けたときだった。



「俺はあんま好きじゃない。」



聞こえるはずのない声が聞こえた。



瞬間、身体に何か冷たいものが広がっていく。



サーッと血の気が引いていった。



ゆっくりと辺りを見回す。



誰も、いなかった。



隣の寝室から聞こえてきたわけではない。



すぐ近くで聞こえた。



「ソラ、なんか聞こえたよね?」



気味が悪い。



嶌子は思わずソラの背中を撫でた。



が、いつもはそうすると落ち着くのに、今日は違った。