「一目惚れ??」




亜姫が笑った。
その笑いに少し、面白さ半分を感じて。俺はムスッとする。


「別にそんなんじゃ、ねぇよ」

「へー・・・ナツが恋、ね」



昼休み。

教室内には、俺と亜姫と数人の女子のグループが残っていた。
片手で持っていたパンを頬張る。

前後で席に座ればいいのに、俺達は横に並んで座っている。
そのせいで、話すときは右を向かなくてはいけない。

なんでこんな面倒臭い座り方してんのか。

俺は不思議なんだけど、これはいつものことで。

そう座ることが暗黙の了解になっている。



「ナツも、恋なんてするんだ」

「だから、違うって。
しかも、なんだよそれ。
俺はサイボーグかよっ」



亜姫は俺とは違い、机の上に風呂敷を広げて弁当をおいていた。

赤い一段の小さなお弁当箱に、白ご飯やおかずが丁寧に入れられている。



亜姫の細い指が箸を動かす。

卵焼きを食べる、たったそれだけの動作が、彼女だと優雅に見えるから不思議だ。