確かに変な感じだった。都会の喧騒から離れ、隔絶した空間に二人ぼっちだ。僕とリカは同じ解放感を味わっていた。一瞬だけ全てを忘れて元の二人に戻れた気がする。
少なくとも、その時のリカの笑顔は、殺那的に切り取られた悲しい笑みではなく、僕が今まで見続けてきた大好きなリカの笑顔だった。

写真になんて写らなくていい。ただ目の前に心から笑うリカがいてくれれば他に望むものはなかった。

見慣れたはずの丸くツルツルとしたリカのすっぴんが、たまらなく愛おしく感じる。気が付くと僕の目にはうっすらと涙が溜まっていた。

「やっぱ来て良かったな」

僕はそういいながら、慌てて温泉で顔をジャブジャブと洗った。