「懐かしいね」

町田からロマンスカーに乗って約一時間。根湯本の駅を降りて彼女はいった。

「そうだな。この前きた時は去年の3月だもんな。あれから一年半もたつのか。」

記録的な猛暑が終わり、10月になった箱根の山は少し肌寒く、ひんやりとした空気を放っていた。

「リカ、大丈夫?寒くないか」

「うん。平気」

リカは気持ち良さそうに深呼吸をして、都心では味わえない新鮮な空気を楽しんでいた。

彼女と付き合い始めたのは今から4年以上前。二人ともまだ十代だった。田舎の高校を卒業し、同じ飲食店の会社に就職したのがきっかけだった。新入社員は10日ほど川崎にある本社で研修をし、それぞれの店舗に配属されるのだが、僕とユキは店舗は違うが、たまたま同じ地域に配属された。

初めの一年は友達同士。一緒にご飯を食べたり、カラオケに行ったり、仕事の愚痴を喋ってるうちに、気づけば付き合っていたという良くあるパターンだ。

リカは僕の方からアプローチしてきたといっているが、僕は逆だよといって、今でもよく二人で笑っている。