「おお!!梅!入れ、入れ!!」

 お梅は襖を開いた後、目に入った葵を怪訝そうに見た。

 「へぇ…芹沢はん、こちらは?」

 お梅は芹沢の隣にすとんと座り、葵を見つめた。

 「おお!儂の小姓だ。」

 「小宮 葵です。はじめまして、お梅さん。」

 葵はお梅にぺこっと頭を下げた。お梅はまるで女優のように綺麗な女性だった。

 「そう。可愛い子やね、芹沢はん。まるで、弟でも出来たみたい。」

 お梅はくすくすと笑った。

 「それならば、お梅さんは俺のお姉さんですね?」

 そう言った葵も、お梅につられてくすっと笑った。

 「あっ!!お茶、持ってきますね?」

 葵は2人に気を使い、立ち上がり台所へと向かった。芹沢がお梅に渡せると信じて…。




 「芹沢局長、お梅さん、お茶持ってきましたよ~。」

 葵はお盆にお茶が入った湯呑を3つ乗せて、運んできた。

 「入れ、小宮!」

 「はい、失礼します。」

 嬉しそうな芹沢の声がしたのを確認し、葵は中へと足を踏み入れた。中には嬉しそうに顔を綻ばせたお梅が、芹沢がプレゼントした櫛をつけて芹沢に寄り添っていた。

 「お茶です。ここに置きますね?」

 葵は芹沢を見てニッコリと笑った。

 「見て!葵はん!!芹沢はんがくれはったんよ♪どう?」

 お梅は芹沢から離れ、葵に近付いてきた。

 「すごくお似合いですよ、お梅さん。…きれいです。あっ、お世辞とかじゃありませんからね!?」

 葵もお梅にニコッと笑った。

 「ほんまに?なんや、葵はんに言われると、素直に嬉しいわぁ…。弟って感じよりも妹みたい。ねぇ、“葵”って呼んでもええ?私のことは“姉さん”て呼んで欲しいわぁ♪ええ?」

 「はい。」

 葵はお梅の勢いに押されて頷いていた。