時間は戻り、朝食後の屯所の庭。
「小宮さ~ん♪」
葵は溜息をついた。
「沖田さん…なんです?」
こちらに来て2日で分かったこと。それは沖田が極端に空気が読めないということ。
「ひどいなぁ…そんなに怒らなくてもいいじゃないですか…。」
沖田はぷうっと子供のように頬を膨らませた。
「怒っていませんよ~。で、なんですか?沖田“先生”?」
「先生はやめてくださいよ~。土方さんが呼んでたんです。なんか、渡したいものがあるとか…そうだ!小宮さん、昼の見回りは一緒に参加してくださいね?門のところで集合ですから。」
葵は頷いた。沖田はニコッと笑い、足早に去っていった。葵は沖田の背を暫く見ていたが、その後、土方の部屋へと走っていった。
「ほら、開けてみろ。」
葵は土方の部屋で、1つの包みを前にして座っていた。土方とは、向かい合わせになるように座っている。
「これですか?」
「そうだ。」
葵は目の前の包みを開けた。
「…隊服…?」
「あぁ。着てみろ。」
葵は土方に言われるまま、それを上に羽織った。土方が、品定めするような目で見てくる。
「あの…変ですか?」
「……いや、よく似合う。大きさも大丈夫なようだな。」
葵は赤面した。“よく似合う”と言った時の土方は、微かに微笑んだように見えた。しかし、それもつかの間。次の瞬間には、眉間に皺を寄せたいつもの土方になっていたのだった。
「用件は、それだけだ。もう、下がっていいぞ。」
「はい。それでは、失礼します。」
葵は、山崎の(自分の)部屋へと足を進めた。廊下を歩きながら、ふと気付いた。
“昨日…幸人、どこで寝てたんだろ……”
葵は、部屋に山崎がいることを信じて襖を開けた。