「そーだ、平助ってさ、北辰一刀流だよね?」
唐突な話に、藤堂は不思議そうな顔をした。
「そうだけど、どうかしたの?」
「ん~…、強かったなぁ、って思ってさ…。久しぶりに、楽しかったなぁ~♪」
葵は思い返すように、目を細めた。
「でもさ、勝ったのは葵の方じゃん?でも、どこの流派か分かんなかったや。小宮流って言ってたけどさ、どこの流派なの?」
葵は、言葉に詰まった。まさか、“未来の流派です”などと、言えるわけがない。“小宮流”は明治頃に出来たと、兄・榊から聞いたことがあった。
「え~っとね…、小宮流は、まだ小さな流派だから、知らないと思うよ?小さな道場だし…。」
嘘は言ってない。しかし、罪悪感は残った。
「そうなの?あんなに強いのに…。にしても、不思議な攻撃だよね。」
「まぁ、小宮流は苦手を補って、得意なものを強く出来るからね。」
葵は、食べ終えた団子の串を皿に戻し、もう一本を手に取った。
「“苦手を補い、得意を伸ばす”ってこと?」
「そう!例えば、昨日の試合の時に使った“三段流しの三段・初音”とか。あれは、俺の得意技だから。」
藤堂は、少し目を見開いた。興味津津、と言ったところだろうか。
「“三段流し”っていうのは、その名の通り、攻撃を全て流れるように打ち続けるんだ。相手が攻撃を流し続ける限りはこっちからは大技を仕掛けにくいんだけどね…。けど、相手が受けに回れば大体は勝てるんだ。変わった技だから、実践には向かないのかな?」
葵ははにかむように笑った。
「そうなんだ~。でも、-」
「あれ?平助じゃありませんか!」
藤堂の言葉は、いきなりの登場人物に遮られた。
「そ……総司…」
藤堂の言葉を遮り現れたのは、沖田だった。
「あっ!沖田さん!!こんにちは。」
「小宮さん、平助と来ていたんですか?」
葵は沖田に頷き、肯定した。
