「酒だぁ~!!酒持ってこ~い!!」
芹沢は酔いが回ったのかだんだん不機嫌になっていった。最終的には、酔いつぶれて寝てしまった。
「おまえは来なくていい。行くぞ…。」
新見は酔いつぶれた芹沢に肩を貸し、野口、平山、平間を連れて部屋を出て行った。葵は、それを見送りながら考えた。
“…芹沢は、酒が入ると暴力を振るうようになる………か……。じゃあ、酒が入らなければ?………いずれにせよ、様子見から始めなければ…。”
芹沢達が見えなくなるまで見送ってから、葵は土方と近藤の元へと向かった。
「…土方さん…近藤さん…山南さんはどちらに?」
「ぉお!!小宮君!サンナンさんなら、あっちで源さんと飲んでいるよ。挨拶しに行くのかい?」
「はい。御世話になる方々ですので。」
葵は近藤に一礼してから、教えてもらった山南の元へと足を運んだ。
「あの~……山南さんですよね…?それから、井上さん。はじめまして。小宮 葵です。よろしくお願いします。」
「はじめまして。私は、山南 敬助です。平助君から聞いてますよ、試合のこと。」
そう言って、山南はニコッと優しい笑みを浮かべた。
山南 敬助<ヤマナミ ケイスケ>。文武共に優れており、“鬼の副長”と土方が呼ばれるように、“仏の副長”と呼ばれる人物。剣の腕も新撰組の中でもトップ10に入る腕前だったと言う。
「ありがとうございます。」
葵は、はにかむ様に笑った。
「私は井上 源三郎だよ。皆からは“源さん”と呼ばれているから、小宮君もそう呼んでくれたらいいよ。」
井上も山南同様、優しい笑みを浮かべた。
井上 源三郎<イノウエ ゲンザブロウ>。通称“源さん”と呼ばれ、皆の良き相談相手。
「はい。源さん!」
葵は、ニコリと2人に笑い掛けた。
「挨拶回りかい?」
山南が聞いてきた。葵が“はい。”と答えると、続けて山南が提案をしてきた。
「葵君、平助君に紹介を依頼してはどうですか?なんなら、私が―」
「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます、山南さん。」
葵は、2人にぺこりと頭を下げ、その場を離れた。葵は“あと、顔を知っているのは…。”と考えた。
