「…近藤さん、どうしますか?斬りますか?斬るなら早めに終わらせましょう?」

 「まぁ待て、総司…まだ間者か曖昧な隊士もいるんだぞ!?」

 「じゃぁ、近藤さんはこの組の内部情報が漏れてもいいってぇのか!?」

 「そうは言ってないだろう!?」

 葵は白熱している口論を不思議に思いながら見つめた。近藤があんなに声を荒げるのは珍しい。土方が大きな溜め息をついた。

 「…小宮……止めてくれ。俺じゃどうにもできない。」

 「…努力はしますよ。」

 葵も呆れたように溜め息をつき、部屋の奥の方で大声で話している近藤達へと近付いた。

 「……“斬る”だの“斬らない”だのの話は、もう少し声を潜めてするものですよ、皆さん?これじゃ密談になっていませんよ。」

 葵は一番近くにいた永倉の肩に手を置きながら声を掛けた。

 「小宮君!起き上がって平気なのか!?どうしてここにいるんだ!?」

 「どうしてとは、心外ですね…総隊長の俺が居てはいけないことでも話していたのですか?」

 近藤はうっと言葉を詰まらせた。

 「…この組に間者がいるんだがな、まだ曖昧な奴が多くてな…斬る、斬らないで揉めてんだよ。」

 「新八っ!?」

 永倉が小声で言ったのに対し、近藤の声は大きかった。

 「…丞でも駄目だったのか…丞、間者の可能性がある隊士の名前、読み上げて!」

 「おぅ。まずは楠木 小十郎。これはほぼ確定や。後は荒木田 左馬之輔、御蔵 伊勢武、越後 三郎。この3人も間者やろ。松井 龍二郎は間者の可能性は低いわ。」

 山崎が淡々と名前を読み上げるのを葵は身動きせずに聞いていた。

 「…これで全員や。13人もおる。」

 葵は山崎の言葉に記憶を探った。