「……“黒”…か…まぁ、お前の言うことにも一理ある。しばらくは様子見にしとくか…」

 「だな。…では、山崎君。小宮君を頼んだよ。」

 近藤と山南は葵に微笑み掛けてから部屋を出て行った。土方も立ち上がり葵達を見下ろすように見、大きく息を吸った。

 「……小宮…明日には動けるようになるくれぇの心構えでいろ。何日も伏せっていられちゃ困る。いいな!治せよ!!」

 土方は荒々しく言い放ち、出て行った。山崎は完全を土方の足音が聞こえなくなってから、肩を震わせ笑い出した。

 「丞?いきなりどうしたの?」

 「…いやっ…だって…クッ…副長、不器用過ぎやろ……」

 山崎は笑い過ぎで目尻に溜まった涙を左手の人差し指で拭った。

 「素直に“はよ、元気になりや~”って言えばええのに…。」

 「どうせ照れ隠しでしょ?確かに、鬼副長が照れ隠し……笑える。」

 葵と山崎は顔を見合わせ、笑った。






 「………寝た、か…」

 山崎は葵の少ししんどそうな表情を見つめながら言った。葵の熱は高く、吐き出す息も熱を持っていた。

 「…もう少し、おってやりたかったんやけど、時間や…物怪の幸いやないけど、葵に、あの3人も殺す命令が出てたなんて言いづらいから良かったわ…。あの3人は見回り中に何者かによって殺害された。そうなるやろな…」

 山崎は葵に語りかけるように話していたが葵の頭を数回撫でてから立ち上がった。

 「さて、一仕事しに行こか…」

 山崎は左手に大きめの刀を持ち、胸元に入れた“苦無”を確認した。そして、何を思ったのかその内の1本を葵の枕元に置いた。そして、葵を愛おしそうに見つめたその人の体は闇の中へと消えて行った。