「……あんたまだいたの？」


授業開始まで残り十分。絢が確認のため扉を開けると、そこにはまだセイランの姿があった。


「お待ちしておりました。この島で一番の瞬間移動能力を持つ水立絢さん」

「……気持ち悪い」


セイランの言う通り、島の中でも数人の瞬間移動能力者がいて、その中で一番強力な力を持つのが絢なのである。


当然Ｓランクであり、周囲の人からは尊敬の眼差しで見られるほどの、実はすごい人物。


「私はあんたの移動手段じゃないんだけど」

「重々承知しております。しかしどうかこの哀れなＥクラスの者に救いの手を」

「……気持ち悪い」

「いやしかし！　部屋から直接瞬間移動せずに再び扉を開けてくださったことに関して、俺は一筋の希望を……」


セイランの言葉を最後まで聞くことなく、絢の姿は消えた。