中からひょっこり顔を出したのは、美しい黒髪をポニーテールにくくった一人の女性。


「うるさい」

「ちょ……あっ!」


バタン、と。再び扉は閉まる。


「あのヤロー、人が困ってんのに……」

「寝坊する方が悪いんでしょ」


中から扉越しにくぐもった声。無論セイランに反論の余地はない。


「……頼むよ! 遅刻するとあの先生うるさいんだ!」


懇願しようと切り替えたものの、中から返事はない。


先ほど顔を出した彼女は水立 絢(みずたて あや)。セイランは絢の能力で学校に向かおうと頼み込んでいるのだ。



絢の能力は瞬間移動能力。

彼女は幼い頃にセイランと時を同じくして超能力者養成島に入った、いわゆる幼なじみと呼ばれる関係に当たる。