月光御伽



不思議だった。
鏡の中の私のものとは違う掌。

何もかも、今の出来事は

普通では考えられないのに。
恐怖や気味の悪さを感じるところなのに
何も感じなかった。
むしろ、安堵した。

それに伝わる筈のない
温かささえも感じた。



─居るのなら返事をしろ。


『居るわよ。』


─女か…俺が怖くないのか。


頭に響く低音に頷き、不思議ね。
と独り言を溢した。




─本当に、不思議な女だ。

ふっと笑みを溢した鏡の彼。
見てみたいと、なんとなく思った。


『あんた、ここから出られないの?』


─ああ。そうだ。


『なんでこんな所に入ったのよ。』


─好きで入った訳じゃない。閉じ込められた。


『じゃあ、私が出してあげる。』