『何よ、これ…』
私の目の前には大きな鏡が置かれていた。
普通の全身鏡を横に三台並べたくらいの。
鏡の周りは水晶の結晶の様なものに
覆われていた。
その結晶は今までに見たことの無い
淡く儚い光を溢れさせていた。
『…綺麗。』
気付いたら思わず手を延ばしていた。
指先が触れた途端に鏡の中の私は
崩れ去っていた。
『嘘でしょ?』
触れた指先が鏡から離れない。
いや、体が動かない。
金縛りにあったように
全身が凍り付いたかのように。
ここで初めて、恐怖した。
─誰かそこに居るのか。
暗い鏡の中に見えた掌は
私の指先にそっと触れた。

