月光御伽




そこで無理矢理、記憶の蓋を閉めた。
目を開くと静かで寂しい神社。



こんなところで匠を待っても
あのときの様にまた
私は匠を傷付けてしまう。
誰よりも私と一緒に居てくれた
大切な匠を…。



私なんか、どこか遠く
誰にも迷惑の掛からない
どこか遠くに
行ってしまったほうが
良いのかもしれない。


『─良いに決まってるわ。』



私の体を冷やす様に風が吹く。
顔に掛かった漆黒の長髪を
両手で掻き分けると
神社の異変に気付いた。