『きっとさーちゃんなら、きっと…あの世界を救ってくれると思うから…』

『何…?意味わからねーよ紗夜』

だから貰って、と紗夜はもう一度言うと、ひゅうひゅうと嫌な音を立てる喉から咳き込み、血を吐き出す。

『紗夜っ!』

『…ごほ、ゴホっごほっっ…ごほゴホ…っっ』

今度の咳は止まらず、彼女を蝕んでいく。

産まれた時から、いつも一緒だった。
性格は正反対で、双子なのに何度も男子に本当に姉妹か聞かれた。
紗羅が、男の子っぽいのに比べて、紗夜はお人形みたいに可愛いかった。

だから護らなくちゃ。

そう思ったのに。









『"紗羅"…ごめ、んね…』

初めて、彼女にそう呼ばれた。

だからわかってしまった。

『い、やだ嫌だ嫌だっ…!』

目を細め小さく笑った紗夜は、そのまま眠るように瞼を閉じた。

それっきり彼女は目を覚ますことがなく。
紗羅の悲鳴が響き渡ったのだった。







『嫌だ…紗夜ぁあぁぁぁあっ!!』