"キスしたい"その一言であたしは、本音を言ってしまう。

いや、言わないと大変。

...
本気で彼はキスをしてくるのだ。



「杏里。」


「ん?」


妙に声のトーンが低くなったと思い、奏の方を振り向いた。



『ちゅっ』


唇に、柔らかい感触が触れた。

まさか、まさか!



──そう思った瞬間にはもう遅かった。




「奏、やめてよ!」



「なれているからいいじゃん、篠原杏里さん?」

眼鏡をかけなおし、にやりと微笑んだ。