トナリの無口くん



野口は、きっとあたしを連れ戻しに来たんだよね。

でも、言わなかったんだ。

あたしの気持ち、考えてくれたんだ。



あたしは、今、すごく嬉しくて、すごくパニクってて、でもやっぱり嬉しくて……



あたしは、遠くなっていく野口の背中を、思わず追っていった。




「………野口……っ!!!」

あたしは野口の名前を叫んだ。


振り向く野口。



「……なに???」


「………ありがと」

あたしは野口に笑いかけた。


「あたし、戻るね」

あたしは、さっきの廊下に帰ることに、決めた。


野口は、なにも言わなかった。


ただ、少し目尻を下げて、

あたしの肩をポンと叩いた。



あたしには、それで野口の気持ちがわかった。

きっと、野口も、あたしの気持ち、分かってくれてるよね???



あたしたちは、一言も話さずに、もといた廊下に戻っていった。