家に着き、乱暴に靴を脱ぎ自分の部屋に入りベッドに顔を押し付けた。

泣き声を押し殺すようにして。

よかった…。お母さんが仕事に行ってて。

こんな顔見せらんないよ。

ベッドから、起き上がり唇に触れた。

あたしがこんな地味でも、初めては好きな人としたかった。

まだ見ぬ恋心だって、憧れはあった。

なのに、瑠稀はムカつくからあたしにキスをした。

あたしが気に入らないから。

ゴシゴシと唇を擦る。

こんなことしたって、この悲しみは癒えることはないけれど
こうせずにはいられなかった。

消し去りたかった。

なかったことにしたかった。

周りの女の子が騒ぎ立てる瑠稀の綺麗な顔。

あたしは大嫌い。

その綺麗な顔で、平気で傷つくことを言うから。

あたしの嫌がることをして笑う顔が大嫌い。

悔しくて、唇を噛んだ。

血が出て鉄の味がした。

あたしの初めてのキスは、血と涙の味がした。