地味子の初恋



「おい、座ればいーだろ」

薬とコップを持って立ちつくすあたしに言う。

瑠稀の隣の空いた椅子に座った。

薬を口に入れて、水で流しこんだ。

「栞、ここにいたんだな」

瑠稀の声にビクッとする。

「北高退学になってラッキーだったな」

ニヤっと、薄ら笑いを浮かべる。

瑠稀があたしにだけ見せる顔。

おもちゃを見つけた時に見せるんだ。

「…あたしがここにいるって知ってたの?」

「ああ、偶然な。そうじゃなきゃ、電車乗ってまでこんな学校来るかよ」

ゾクッとした。

コイツはまたあたしをおもちゃにする気なんだ。

からかって、みんなの前で恥をかかせて笑い物にするんだ。

唇が震えた。

せっかく、逃げてきたと思ったのに。

「離れられると思った?俺は一生放さないよ。残念だったな、地味子ちゃん」

ニッと笑う瑠稀。

最悪だ、なんで逃げられないの…。

悔しくて、唇を震わす。

地味子なんて言葉もう聞くことはないと思ってたのに、ねえなんで現れたの?

どうして、離してくれないの。

「なんで、あたしに構うのよ…!瑠稀になんか、もう会いたくなかった!!っ…」

悔しくて、声が零れる。涙と一緒に。

すると、瑠稀は眉間に皺を寄せて不機嫌さを露にした。

「地味子のくせに、言うようになったな。おまえは俺の言うこと聞いてればいいんだよ」