教壇の前に立つ彼を、担任が紹介する。

「相模 瑠稀君だ。北高校から転校してきた。色々教えてあげるように」

目の前にいる彼、あたしに地味子というあだ名をつけた張本人だ。

彼から逃げるようにこの高校に来たっていうのに…!

会いたくなった瑠稀は、中学の頃より背が伸びていて何より、真っ赤な髪が目をひいた。

両耳にピアスもいっぱいついていた。

制服も着崩してて、明らかに不良ってかんじだった。

「じゃあ、相模からも一言言って」

担任に促され、瑠稀が口を開く。

「相模 瑠稀。よろしく」

教室からは、いろんな声が湧く。

「やだ、超カッコよくない?!」
「北高って、ヤンキー校だろ?」
「でも、危険なかんじで素敵!」

いろんな言葉が聞こえるこれど、あたしにはどうだっていい。

「じゃ、相模はそこの空いてる席な」

席はあたしの席とは離れていて、それだけは救われた。

「やだ!超嬉しいっ!」

隣の席になった派手な女の子は歓喜の声を上げている。

「ねえねえ、なんで転校してきたのー?」
「あ?喧嘩して退学になった」

そんな声が聞こえた。

「あはは、うけるー」

何がうけるのか、あたしには分からないけれど
あたしはこれからが不安でしょうがなかった。

なんだか、胃が痛くなってきたし。

「こら、静かにしなさい。授業始めるぞ」

担任が話し声を遮った。

「っ!」

その時、瑠稀が振り返りあたしを見て視線が交わった。

綺麗に線を描く二重の目に見られて、胸の音が高鳴った。

ドキドキと不安が増す。

すると、瑠稀の唇が弧を描いて嫌な笑みを浮かべた。

途端に、胃がキリッと痛んだ。

「っ…!」

うめき声をあげる。

「ちょっと!栞大丈夫?」

前の席の葉南が声を上げるけど、答えることが出来なかった。

すると、体が宙に浮いた。