「ただいま~」

今日も一日かったるい仕事が終わった。
時計を見れば……午前二時。

こんな時間じゃ、眠気も通り越してただただ残るのは疲労感だけ。

「お帰りなさい、林檎」

「かあさん……起きてたんだ」

俺……いや私の本当の名前は『種無林檎』(たねなしりんご)、十六歳。
今年高校生になったばかりなのです。

「お茶入れたの、どう?」

「あ……うん、ありがと」


カタ……ッ


こんな時間まで起きていてくれた母親には感謝だけど……

「ハァ――ァ」

今は溜息しか出ない。
湯呑に中に映る自分の姿は溜息の塊、その根本とも言える。

「これも運命なのかしらね?」

私の姿を見かねた母親が言った一言。


『運命』――

こんな言葉でまとめられるのも、なんだか癪に障る。

しかし私が夜になると『女』から『男』に変化してしまうのは、
ある掟に従ったからなんだ……