ガチャ



再び扉が開いた時、さっき鍵を持って入った男と、
もう一人別の男が一緒に出てきた。


「……父さん」

私は顔も知らないのにその男に呼びかけていた。

「クラリス」

声に反応してくれた男はどうやら父さんで間違いないらしい。
しかし、紅皇が言っていたもう一人の男、
『ドクターキリト』の姿が見当たらない。


「すまない。私のしたことは間違えていた、愛する娘を犠牲にしてまで権力を得ようとするなんて……許してくれ」

父さんは床に手をついて私の目の前で跪いた。



「顔を上げてよ。私、もう怒ってないから」

「……クラリス。許してくれるのか」


「許すもなにもさっきも言った通り、私は初めから怒ってないって言ったでしょ。だから……」

私は右手を差し出した。



「一緒に帰ろう、母さんのいるところに」





「ありがとう」




ゆっくりと差し伸べてくれた父さんの手がとても温かった。