「すごい……本当に来ちゃったんだ」

まだここが日本のどこかであってほしい気持ちも実際、
自分の中にあったことはこの際はっきりと言っておこうと思う。

「僕の魔力をギリギリまで高めるとできるんだ」

魔力……
私にはない能力。

「私にはできないのかな」

「林檎にももちろん魔力は存在する。だけどその『男』になるという特殊な体質が君の中に潜在する魔力を封じてしまっているんだ。おそらく、それがキリトの作った薬の副作用なんだと思う」

「そっか……」

「妖魔界は見ての通り漆黒の闇が一日中続く世界、言わば『闇』に反応して男になる。だから明るい間は、なんらかの作用が働いて一時的に本来の姿に戻ることができるんだろう。まぁ、要するにこの薬はまだ完璧ではないってことだな」

自分が今の姿が確認できなかった。
しかし『女』ではないことは分かっていた。

「紅皇はどうして、私に協力してくれるの」


「それは――『ひ・み・つ』」

いたずらぽく言った彼の顔がすごく無邪気で、
こんな表情もできるんだな……って見とれていた。



いつか、その「ひみつ」がちゃんと聞ける日が来るのかなぁ。