宏くん、聞いて…。

あたしね、しっかり生きてるよ。


だって、あなたの笑顔があるから、あなたに愛された日々があるから。


あなたと出逢えた、日々があったから。




待ちに待った日がやってきた。
今日は高校の入学式。今日、あたしは高校生になる。

中学の生活とは、なにもかも違う、新鮮な世界。

昨日までの思い出を、そっと心の箱にしまう。

3年間、大切に着てきた制服はクローゼットに移す。
まるで、お別れするみたいね。

「今日からかぁ…」

楽しみとは裏腹に、不安でいっぱいになる気持ち。


気分転換で窓を、開けてみる。

最近ほんのりと色づいていた桜が、もう綺麗なピンク色に染まっている。

綺麗よ、本当に綺麗…。目を奪われるような、桜。

大勢の桜の木が広がる、桜通り。

あたしは桜が、大好き。
だから「美桜〈みお〉」と言う、自分の名前が好きなの。

美しい桜のように、純潔で優しく育つようにと言う意味が込められた名前。

いつか、あたしが愛した人に呼んで欲しい。
そしたら、もっとこの名前が好きになる。


春は出逢いの季節だと、そう聞いたことがある。
だから、あたしは好きよ…。

人が誰かを心から愛し、愛され、結ばれる。そんな季節だから。

だから、あたしにも見つかるかな?
運命の人。自分の小指を見つめ、空に聞く。

この小指に繋がれた、見えない赤い糸が、繋がっているのは誰ですか?


心から、愛したい。心から、愛されたい。

そんな幸せな恋愛をしたい。
ねぇ、神様?このとき、あたしの運命は決まっていたのかな。