あたたかな雨


――ざぁあ


雨の雫が傘に落ちて、強めの音を立てる。

何を話していいかわからなくて、黙りこくる。

それは彼も同じようで、少し気まずそうに歩いていた。


せっかく傘に入れてくれたんだし、何とか話題を作ろうと頭を捻って、下駄箱でのことを思い返す。

ひとつ聞きそびれたことを思い出して、彼に訊いた。


「そういえば、どうして私の家知ってたの?」

「ああ、うん。僕の家は乙原さんと結構近くて、帰るとき結構見かけてたんだ」

「そうだったんだ……」


微妙な時間の差なのかな。

そう言われて思い返すと、長身の制服を着た男の子を何度か見かけたことがあった。

いつも後ろ姿ばっかりで、顔はわからなかった。

だけど、今思い返すと陸奥くんだったのかもしれない。


こんなに格好良い人だから、住む世界なんて違うと思ってたけど、なんだか親近感が沸いた。